東京都北区、王子。
この町には、古くから語り継がれるある伝説があるのを知っていますか?

それが「狐の行列」です。
それを現代に蘇らせた幻想的な年越し行事、
それが「王子 狐の行列(おうじ きつねのぎょうれつ)」なのです。

歌川広重の浮世絵にも描かれたこの情景は、
日本が持つ独特の世界観を表しています。

近年は様々な国の人がこの行事に興味を持っており、
大晦日の夜に人で溢れかえっていました。

今回は、この「王子 狐の行列」について、
その歴史から当日の楽しみ方まで、余すところなくご紹介します。

大晦日の開催:王子の様子

日本中が一年の労を労い落ち着きを出す大晦日。
日本中のどこでもゆっくりとした時間が流れ、
空気の流れが穏やかなものになっています。

多くの人が除夜の鐘を聞きながら蕎麦を啜るその時、
東京都北区、王子は少し熱気に包まれまていました。
王子の年越しは、他の地域とは一線を画します。

夕暮れと共に、
町には少しずつ「狐」の姿をした人々が増え始めるからです。
単なる仮装イベントではありません。

古来より「関東一円の狐たちが、装束を整えるために王子に集まり、
王子稲荷神社へ参拝した」という言い伝えを再現する
祝祭的な儀式なのです。

提灯が灯り、
着物を着て行き交う狐面の参拝者たちを目にすることができます。
日付が変わる深夜0時に向けて、町全体の静かに活気づいていました。

狐の行列とは:伝承の世界を歩く

「狐の行列」とは、その名の通り、狐のメイクや面を施し、
和装に身を包んだ人々が提灯を手に練り歩く儀式です。

行列のスタート地点となるのは、
その昔、狐たちが衣装を整えたとされる榎(えのき)の木があった場所、
現在の「装束稲荷神社(しょうぞくいなりじんじゃ)」

そして、この行列の目的地となっているのが、
関東稲荷総社の格式を持つ「王子稲荷神社」です。

深夜0時、年明けの瞬間と共に、
装束稲荷神社を出発した行列は、厳かなお囃子の音と共に
王子稲荷神社を目指してゆっくりと進みます。

裃(かみしも)を着た正装の狐たちが先導し、
子供から大人まで、思い思いの和装と狐の姿で続くその光景は、
まさに「百鬼夜行」ならぬ「百狐夜行」。

提灯の揺れる灯りが、白塗りの顔や狐面を闇夜に浮かび上がらせ、
現代のビル街と江戸の情緒が混ざり合う不思議な空間を作り出していました。

行列は先頭には、狐の囃子が立ち、狐の大面が続きます。
正装狐の一段の後ろに一般参加の行列が続き、
長い狐の行列を見る事ができます。

行列に参列している人、
その行列を見ようと沿道に並ぶ人達、誰もが楽しそうでした。

子ども向けのイベント:家族で楽しむために


この祭りは、大人のためだけのものではありません。

しっかりと子どもや家族と一緒でも楽しめるイベントが用意されていました。
「狐の行列」が行われるのは深夜0時、
この時間に子どもが起きているのは大変です。

また海外でも人気になっているため、
当日は非常に混雑しており、
沿道の道は歩いて移動するだけでも困難で、
子どもとはぐれてしまう危険性もあります。

年齢が低いお子さんと一緒の場合には、
日中にイベントを一緒に楽しむことをお勧めします。

子どもと一緒に楽しめるイベントとして、
狐のメイク体験と合わせてできるスタンプラリーや
オリジナル狐のお面作り、提灯作りなど、
体験できるものが複数あります。

スタンプラリー:王子の町を巡る冒険

子どもと一緒に楽しむなら、「スタンプラリー」がお勧めです。

狐のメイク体験も含まれており、
仲良くなれれば地元の子どもたちと一緒に巡るのも良いでしょう。
家族と一緒に回っても問題ありません。

装束稲荷神社を中心に、
そして駅周辺の商店街など、
王子の名所旧跡に設置されたスタンプポ集めて巡ります。
王子駅周辺を歩くだけなので、
ゆっくり回っても2時間とかからない距離です。

スタンプを集める過程で、
普段は何気なく通り過ぎてしまうようお店や風情、
地元の人々の温かさに触れることができます。

全てのスタンプを集めた参加者は、お菓子を貰うことができ、
子どもたちの笑顔がありました。

地図を片手に、スタンプを探すのは子どもたちにとっては、
良い冒険になっているのではないでしょうか。

狐の行列の代わりに王子を歩く疑似体験にもなっていましたね。


提灯作り:闇夜を照らす命の灯り

狐の行列に欠かせないアイテム、それは「提灯(ちょうちん)」です。

「狐火(きつねび)」という言葉があるように、
狐と火(灯り)は切っても切れない関係にありますが、
狐の行列もこの提灯を持って歩く様子をみることができます。

日中のイベントでは、子ども向けの「手作り提灯」の
ワークショップが開かれていました。

本来の提灯よりも作りやすいものになっているのが特徴です。
厚紙を使用したなので、繊細な作業はそれほど必要ありません。
工作が好きな小学生低学年くらいの年齢子どもに
最適なワークショップになっていました。

提灯の中にLED電球を入れることができ、
夜に照らしながら持って歩くこともできます。

工作は10分~15分くらいで作ることが出来るので、
長時間かかるものでもありません。

自分の手で作った提灯を持って行列に参加したり、
沿道で行列を見送ったりすることは、
一体感を作ってくれますし、思い出にもなります。

なにより家族が楽しそうにしている様子は、
遠くから見てもどことなく明るさを帯びているように感じました。


狐面の塗り絵・絵付け:自分だけの狐になる

工作は難しいという年齢の子どもにおすすめなのが、「狐面の絵付け体験」です。

真っ白な張り子の狐面に、ペンを使って自分だけの表情を描き込んでいきます。

伝統的な赤い隈取(くまどり)を描いて凛々しい表情にするもよし、花模様を描いて華やかにするもよし、あるいはユニークな表情で個性を出すもよし。

世界に一つだけの狐面を作る体験は、ここでしか体験できないものの一つでしょう。

完成した面は、もちろんその場で被ることができます。

少し斜めに被るのがオススメ。面の付け方でカッコ良く出来てたり、可愛くできたりアレンジできる楽しさがあるのが良いですね。

狐になりきるのもいいでしょう。遊び人気分で、傾いてみるのも江戸っ子らしさが出て粋です。

このお面は、祭りが終わった後も、狐の行列に参加した特別感を感じさせてくれるお土産になること間違いありません。

食べ歩き:王子でお腹を満たす

お祭りといえば、「食」も欠かせません。

大晦日の王子周辺では、屋台の出店があります。

しかし大晦日なので他の御祭りを知っている方からすると少なく感じるかもしれません。

それでもここで味わう食は、少し特別に感じるかもしれません。

祭事でもある狐の行列、屋台を探すなら神社の近くがオススメです。

王子稲荷神社、王子装飾稲荷。どちらも近くに屋台の出店がありました。

王子稲荷神社では、甘酒やおでんが出店しており、寒い夜に暖かい食べ物で

身体を温めるのは、日本の伝統的な文化でもあります。

現地の温度に触れながら食べる食は、お店で食べるよりも特別で、

そこでしか味わえない何かがあるのは間違いありません。

王子装飾稲荷では、狐をあしらったお酒や巨大な狐の尻尾をモチーフした麩菓子を買うことができます。お酒は燗酒なので、身体が冷えることはありません。

喉を通せば、温められてた酒がぐっと身体中を巡りポカポカと温かくなります。

日本酒なので、アルコール度数が高いので、飲み過ぎ注意です。

お土産にほしいのが、巨大な麩菓子。

ここでした買えない商品ということで、

インパクトにも残りやすくみんなでワイワイ食べるのに持ってこいなものに感じました。

狐に変身:プロの手で描かれる狐化

このイベントの中で無料で体験できる面白いものがあります。
それが「狐メイク」です。

狐の行列に参列している人の多くが行っている狐メイク。
このメイクを無料で体験できるのです。

狐の行列では、KOSEのプロのメイクアップアーティストが、
狐メイクを施してくれる無料の体験があるのです。
しかも事前予約も不要です。

肌の様子を見ながら顔全体が白粉(おしろい)の白さや、
肌質に合ったやり方を提案しながら進めている様子は、
さすがプロの技といったところ。

伝統文化に触れながら、
プロの技をその場で体験できるのも面白いと感じました。

とくに男性であれば、
アドバイスされる経験など少ないため貴重なアドバイスになっていたことも
多かったのではとも重いました。

メイクのデザインは、
凛々しい古典的なものをベースに行います。
朱色の隈取りで鼻筋が立つ顔になり、
狐らしさが際立つようになっており、
最後に描かれるヒゲで可愛いらしさがプラスされていました。

写真映えも抜群。
非日常を体験するのにはもってこいのイベントです。
一夜限りの幻想的な自分を楽しんでみるのも面白いのではないでしょうか。

狐の行列:クライマックス、除夜と共に

深夜0時になると、いよいよメインイベント「狐の行列」が始まります。
装束稲荷神社には張り詰めた空気は、
新しい年が幕を開けると同時に色を変えます。

裃姿の役員たち、白装束の狐、
着飾った和装の狐たちがお囃子の音とともに動き出します。

独特のリズムを刻む拍子木やお囃子の音が、深夜の通りに響き渡り、
先頭を行く提灯の灯りが、まるで生きているかのように揺らめき、
その後ろに続く狐たちの列は圧巻です。

行列は、北本通りをゆっくりと進み、
北とぴあの前で右折し、王子稲荷神社を目指します。

 煌びやかな衣装にメイク、何より列を成すことで生まれる世界観。
それらが独特の空気を作り墮しているように感じました。

行列は最終的に王子稲荷神社へと到着し、
本殿での正式参拝を行います。

参拝を終えた後、神楽殿で奉納される「狐の舞」が行われますが大行列が発生しているため、何を見るかを事前に決めておく必要があるでしょう。

運が良ければ、王子稲荷神社での様子も楽しめるかもしれません。

狐の行列の歴史:浮世絵から現代への復活

最後に、この行事の歴史について触れておきましょう。

この行列の元となったのは、
江戸時代の浮世絵師・歌川広重が描いた『名所江戸百景』の中の一枚、
「王子装束ゑの木 大晦日の狐火」です。

この絵には、大晦日の夜、大きな榎の木の下に無数の狐が集まり、
口から狐火を吐きながら衣装を整えている様子が描かれています。

当時、農民たちはこの狐火の数や燃え方を見て、
翌年の豊作を占ったと言われています。

しかし、明治以降、近代化の波と共に榎の木は切られ、
狐火の伝承も徐々に薄れていきました。 

転機が訪れたのは平成5年(1993年)。「かつての伝承を現代に蘇らせ、
町を元気にしたい」という地元有志たちの熱い思いにより、
この「狐の行列」は復活を遂げました。

当初は小規模なイベントでしたが、その芸術性の高さと、
日本の原風景を感じさせる精神性が評判を呼び、
現在では海外からも観光客が訪れる一大イベントへと成長しました。

単なる観光イベントではなく、「地域住民が主体となって作り上げる伝統行事」として定着した点に、この行列の大きな意義があります。

広重が描いた江戸の幻想は、平成、令和という時代を超えて、
王子の人々の手によって鮮やかに息を吹き返したのです。

おわりに

王子の「狐の行列」は、ただ見るだけの祭りではありません。

面を被り、提灯を持ち、その場にいるだけで当時の文化に触れることができます。
 今年の大晦日は、日常を少し離れて、
王子の町で狐たちと共に不思議な年越しを過ごしてみてはいかがでしょうか。

当時最先端の研究をこの場所で23区のひっそりとした場所で行われていたというのは新鮮でした。
また、この場所も当時は星が綺麗に見えていたと思うと、東京の発展を感じずにはいられません。

静かに残された場所に当時の最先端が詰まっているそんな場所でした。